ドキュメンタリー映画「AA」〜音楽批評家・間章 間章とは

間章とは....
あいだ・あきら。音楽批評家。1946年新潟生まれ。
立教大学在学中に『ジャズ』誌に音楽批評を発表し、批評活動を開始。また一方で、阿部薫、近藤等則らミュージシャンをプロデュースするなど多岐に亘って活動する。1978年12月12日脳出血で亡くなる。享年32歳。
自らの活動を「音楽を産業の側からミュージシャンや聴き手の側に取り戻す闘い」と位置づけ、音楽を批評しただけでなく、秀でた演奏家を見出して触発するために、彼らの活動場所を設けた。伝説的なサックス奏者・阿部薫や近藤等則、坂本龍一といった世界で活躍するミュージシャンも間章のフィールドから旅立っていったのである。また、フリー・ジャズ、シャンソン、プログレッシヴ・ロック、パンク・ロックなど、間章が注目し紹介してきた音楽は、その時代の新しい潮流になった。彼は32年という短い生涯の中で日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパの実に多くの国を訪れ、様々な演奏家や音楽と出会った。スティーヴ・レイシー、ミルフォード・グレイヴス、デレク・ベイリーの初来日は間章が招聘したものだった。


間章の足跡 *『非時と廃墟そして鏡』(深夜叢書社)掲載の「間章/年譜」を改編。
1946年8月18日
●新潟県新潟市磯町で生まれる。

1964年
●私立新潟明訓高校(3年生)の屋上で新潟地震を体験。

1965年
●3月、私立新潟明訓高等学校卒業。文集『河畔』に小説「斜径の虫―ある彷徨と回想―」を発表。
●4月、立教大学文学部仏文科入学。

1966年
●小詩集『蝕』(私家版)刊。

1969年
●立教大学中退。
●ジャズを契機とする闘争集団「JRJE」(日本リアル・ジャズ集団)にて活動。高柳昌行、吉沢元治、阿部薫、高木元輝、豊住芳三郎などとの作業のほか、『ジャズ』誌に「シカゴ前衛派論」、「前兆又はシカゴ前衛派の未明へ」などを発表。

1970年
●『ジャズ』誌に「開示又はエピグラフを含むジャズ円周率への接近」、「軌跡又は日本のジャズの未知なるものと自立への弁証法」などさまざまな批評を発表。
●JRJEの機関誌『ECLIPSE』創刊。
●初のレコード・プロデュースともなった《解体的交感》(阿部薫、高柳昌行が出演)を新宿厚生年金会館小ホールにてプロデュース。コンサートは一部分を200枚の限定プレスでレコード化。
●同年末渡仏。パリでスティーヴ・レイシーと出会う。

1971年
●病により帰国。郷里の新潟市に戻る。
●イヴェント「自由空間」の準備を始める。母校の後輩であったベガーズ・バンケットの本間亮はこの当時間章と出会い、「自由空間」のスタッフとなる。

1972年
●初のライナーノーツを『ラジオのように/ブリジット・フォンテーヌ』で手がける。
●渋谷ジァンジァンの《モーニング・サウンド》シリーズのプロデュースに参加。
●新潟市体育館で新潟現代音楽祭《自由空間》をプロデュース。出演は吉沢元治、高木元輝トリオ、三上寛、海童道宗祖(ワタヅミドウシュウソ)ほか多数。聴衆は2000人。この模様はNHK総合テレビでドキュメントとして放映される。
●新潟ロックンロール・フェスティヴァル《サウンド・イヴェント 半夏》をプロデュース。
●渋谷の東横劇場にて《瞽女・姻》をプロデュース。瞽女(中静ミサオ、金子セキ、加藤イサ)、木田林松栄(三味線)、望月亞江(薩摩琵琶)、吉沢元治、土方巽(舞踊)などが出演。

1973年
●渡仏。
●共同通信の音楽時評を執筆。
●ブリジット・フォンテーヌ、ジャン・ロジェ・コシモン、ムルージなどのシャンソンのライナーノーツを担当する。
●新宿紀伊國屋ホールにて《冬の椅子には誰も座らない、けれど……》をプロデュース。出演は緑魔子、吉沢元治、吉増剛造、マジカルパワー。
●東京文化会館にて《海童道を聴く会》をプロデュース。法竹の演奏と講義からなるプログラム。

1974年
●シャンソン、ヴァージン・レーベルのロックのライナーノーツを多く手がける。
●『ECLIPSE』復刊準備号発刊。
●吉沢元治ソロ・コンサート《インランド・フィッシュ》をプロデュース。
●渡仏、スティーヴ・レイシーの招聘を決定。レイシー、デレク・ベイリーのソロコンサートを聴く。セルジュ・ゲンズブール、ブリジット・フォンテーヌ、ピエール・バルー、ジョルジュ・ブラッサンス、ジャン・ロジェ・コシモンと出会う。

1975年
●企画集団「半夏舎」設立。
●新宿安田生命ホールにて《位相空間》をプロデュース。出演は高木元輝、富樫雅彦、吉沢元治。
●フランスよりスティーヴ・レイシーを招聘し、日本のミュージシャンとのコンサート・シリーズ、レコーディングをプロデュース。参加ミュージシャンはスティーヴ・レイシー、吉沢元治、富樫雅彦、高木元輝、豊住芳三郎、高橋悠治、小杉武久、佐藤允彦、池田芳夫、翠川敬基。
●青山タワーホールでのEEU(エヴォリューション・アンサンブル・ユニティ=高木元輝、豊住芳三郎、近藤等則、土取利行、徳広崇)の《ファースト・コンサート》をプロデュース。
●吉沢元治のソロ・アルバム《割れた鏡または化石の鳥》をプロデュース。
●阿部薫のソロ・コンサート《なしくずしの死》をプロデュース。ゲストは吉沢元治。
●新橋ヤクルトホールでの富樫雅彦クインテット&CPUの《風の遺した物語》をプロデュース。
●パリのメシアン・スクールに留学中の加古隆を招き、坂本龍一、EEUとのコンサート《リフレクションズ》をプロデュース。
●執筆活動では、共同通信にシャンソン歌手インタヴューの「パリの出会い」を寄せる。晶文社より『エリック・ドルフィー』訳刊。『ジャズランド』誌に「フリー・ジャズ黙示録」、『ジャズ』誌に「ジャズの“死滅”へ向けて」(未完)を連載開始。

1976年
●新宿安田生命ホールでの7時間におよぶフリー・コンサート「判断停止、通過儀礼、無心、地獄変、マナ・クラ・ポトラッチ」をプロデュース。出演は学習団、梅津和時、原田依幸、片山広明、吉沢元治、小杉武久、阿部薫、灰野敬二、坂本龍一、高木元輝、豊住芳三郎、近藤等則、加古隆、裸のラリーズなど多数。
●小杉武久クヮルテット(小杉武久、吉村弘、長谷川吉彦、佐藤康和=YAS-KAZ)にゲストとして富樫雅彦をまじえたコンサート《小杉武久演奏会》をプロデュース。
●『ジャズ』『ジャズランド』誌への連載のほか、『ZOO』誌にて数多くのロック評論を発表。
●渡米。ニューヨークではウィリアム・バロウズに会う。
●その後ヨーロッパに渡り、オランダはユトレヒトの《日本音楽ゼミナール週間》に参加。

1977年
●EEUとともにシシリーでの《コントラツィオーネ'77》に参加。
●パリにてスティーヴ・レイシー・クヮルテット、デレク・ベイリー、EEUの参加で3回のコンサート《インプロヴィゼーション革命》をプロデュース。吉沢元治、吉田盛雄も参加。
●アメリカよりミルフォード・グレイヴスを招聘。日本のミュージシャンとのコンサート、レコーディングをプロデュース。
●執筆活動は、『ミスター・アクション』誌にニューヨーク、ロンドンのパンク・ロックの模様をレポート、日本フォノグラムより発売の『ニューヨーク・ロフト・ジャズ・セッション』シリーズのライナーノーツなど。

1978年
●渡欧。
●イギリスよりデレク・ベイリーを招聘し、日本のミュージシャンとのコンサート、レコーディングをプロデュース。アルバム『デュオ&トリオ・インプロヴィゼーション』を東京ポリドール第1スタジオでレコーディング。参加ミュージシャンは阿部薫、吉沢元治、近藤等則、高木元輝、土取利行。
●雑誌『モルグ』創刊準備号発刊。「デレク・ベイリーの方位へ―即興の新しい地平」を掲載。
●『モルグ』マイナス1号には、清水俊彦の「デレク・ベイリー―新しい即興の開拓者」が掲載される。
●『ロック・マガジン』誌にロック評論(「アナーキズム遊星群」)の連載を開始(未完)。
●渡欧し、パリでバール・フィリップス、ドイツのメルスでペーター・ブロッツマン、ハン・ベニンクと親交を深め、招聘の準備にかかる。
●雑誌『モルグ』創刊。巻頭を飾ったのは「ジャズへの死滅へ向けて(最終稿)」。
●小樽にて裸のラリーズ、ベガーズ・バンケットとコンサートを開催。間章はギターを弾き、歌う。
●日本フォノグラムの“ESPシリーズ”、ビクターの“フリー&プログレッシヴ・シリーズ”のプログラムとライナーノーツを担当。
●12月12日、脳出血にて死去。享年32歳。

1979年
●生前にレコーディングをプロデュースしたデレク・ベイリーの2枚組ソロ・アルバム『ニュー・サイツ、オールド・サウンズ』がモルグ社より発売される。
●『ヴァリエテ』誌で初の映画評論「フィルムと死体置場」が発表される。

1982年
●イザラ書房より、著作集『時代の未明から来たるべきものへ』刊行。

1988年
●深夜叢書社より、ライナーノート集『非時と廃墟そして鏡』刊行。

1992年
●柏書房より、ロック・エッセイ『僕はランチにでかける』、ジャズ・エッセイ『この旅には終りはない』刊行。


間章の著作
●『時代の未明から来たるべきものへ』1982年初版(イザラ書房)
世界のフリージャズメンたちを俯瞰し、また間個人の思想が色濃く出ている。「廃墟」「非時」などの言葉の使い方は、読むものを挑発した。
●『非時と廃墟そして鏡 間章ライナーノーツ 1972−1979』1988年初版(深夜叢書社)
72年から79年にかけて発表された間のライナーノート集。楽曲に関することから飛躍し、間が想起したであろう物語や、当時の自身の生活記録、また音楽理論など、様々な形式で書かれている。
●『僕はランチに出かける〈ロック・エッセイ〉』1992年初版(柏書房)
ローリング・ストーンズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやパンク・ロックなどから本当のロックの意味を探る。ウィリアム・バロウズとの対談も収録されている。
●『この旅には終りはない〈ジャズ・エッセイ〉』1992年初版(柏書房)
1970年代中期に間章が招聘した3人の即興音楽家、スティーヴ・レイシー、ミルフォード・グレイヴス、デレク・ベイリーへのインタヴューと評論が綴られている。

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